20160929-OHT1I50040


1: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/09/29(木)17:39:03 ID:FdV
サヨナラ勝利に沸く札幌ドームのロッカールームで、大きな体躯を揺らしながら一人の男が泣いていた。たった今、サヨナラ勝利を収めた北海道日本ハムファイターズの四番打者、中田翔である。
「今日も打てなかった……。こんなに情けない数字なのに四番……。いっそ車で事故ったら明日から試合に出なくていいかもな……」
中田の不振が響いてチームは首位の便器と11.5ゲーム差。今日の勝利も中田のミスをチームメイトが必死にカバーしてもぎ取ったものだ。チームを引っ張って行かなければと気負えば気負うほどそれが重圧となり、気付けば自分がチームの足を引っ張っていた。
サヨナラ勝ちで燥ぐチームメイトの顔を思い浮かべる度に、無力感と敗北感が中田の胸から溢れ出し、涙となって零れ落ちた――。

ソファーに横たわる中田に朝を告げたのは、栗山監督からの電話だった。
「翔、今日は監督室へ来てくれ」
やけ酒の残るぼんやりとした頭で、中田はサヨナラ勝ちの歓喜の輪を背にして無断で帰路に着いた昨夜を思い出していた。
「どうせ説教だろ。監督の逆鱗に触れて二軍に落とされれば、もう試合に出なくて済むかもな」
そんなことを考えながら適当に食事を済ませると、中田はいつものネックレスを手に球場へと向かった。

ところが、監督室で中田を出迎えたのは、全く想像だにしなかった満面の笑みの栗山だった。戸惑いながらも腰を下ろした中田に向かって、栗山はすぐさま口を開いた。
チームのこと、栗山自身のこと、そして中田のこと。栗山の口から漏れる愛は、まるで母の子宮に戻ったかのように中田を優しさで包み込んだ。
そして、中田がこの部屋に入って初めての静寂―実に一時間ぶりの静寂である―を齎したのは、「翔は今どう思っているんだ?」という栗山の問い掛けだった。
「実は……。『レギュラーから外してください』『二軍へ行かせてください』と、いつ言おうかと考えていました」
今まで誰にも見せたことのない、中田の身体の奥底からそのまま放たれたかのような生臭い言葉が、栗山の顔を目掛けて飛んでいく。もう、終わりだ――。

しかし、栗山の次の言葉に中田は耳を疑った。
「レギュラーは外さない。もう一回頑張ろう。翔で勝負して駄目だったら納得できる。一からやろう」
他人に媚び諂って胡麻を擂るのが大嫌いだった。チームメイトやコーチに「もっとできる」と言われる度に怒りが心頭に発した。
しかし、栗山のことは、監督のことだけはとにかく純粋に好きだった。ここまで選手一人一人のことを愛してくれる人がいるだろうか。監督を男にしたい。俺はどうなったっていい。

栗山の口から溢れ出た言葉が中田の心の粘り付く迷いを拭い去ったとき、中田は今一度全身の血を集めるかのように立ち上がった。そう、二軍行きを志願するなど、逃げでしかなかったのだ。
「俺は、自分のことしか考えていない、本当に情けない男でした……。もうやるしかないですね……。もう一回、もう一回やらせてください」
「翔、よく言った。今日はガッツリ特訓だ」
その日、中田は無心でバットを振り続け、無数の白い放物線を描いた。後に侍JAPANの終身名誉四番打者となる男、中田翔が再びこの世に生を受けた瞬間であった。

それから2ヶ月後、打点王に輝く活躍でチームを逆転優勝へと導いた英雄の目には、野球の歴史を変えた名将の姿が映っていた。
「一つだけ確信したことがあります。翔は、北海道の誇りです」
優勝監督インタビューを見つめる中田の目には、あの日とは違う涙が輝いていた――。

http://www.hochi.co.jp/baseball/npb/20160929-OHT1T50053.html

4: 風吹けば名無し@\(^o^)/ 2016/09/29(木)17:42:53 ID:8Vz
記事と文章違ってて草

これは文豪

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